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どこまでは許されるべきか

個人情報を収集する色々なテクニックがあり、これらはインターネット上での広告やマーケティングのために有用な情報です。こうした行為のどこまでが許され、何をすると一線を踏み越えたことになるのでしょうか?各国の法律に依存するのではなく、ここにインターネットの基準というものがあってもよいと思われます。そのデファクト・スタンダードはアメリカ公取であるFTCの下院へのレポートでしょう。この中の"III. Fair Information Practice Principles A. Fair Information Practice Principles Generally"には以下の項目が挙げられています。

  1. Notice/Awareness
  2. Choice/Consent
  3. Access/Participation
  4. Integrity/Security
  5. Enforcement/Redress
    • Self-Regulation
    • Private Remedies
    • Government Enforcement

これらは見出しだけでも何に注意すべきか/させるべきか大凡のポイントが想像できますが、英文を頑張って読んでみましょう。
"Communications of the ACM" の Feb. 2001 /Vol.44,No.2 に掲載された "The Privacy Practices of Web Browser Extensions" (D. Martin, R. M. Smith, M. Brittain, I. Fetch, H. Wu)という記事には、より常識的な原則が書かれています。

  1. ソフトウェアはユーザに示された機能を果たすのに必要なデータとのみ交信する。
  2. モニターしている場合、その内容の説明を隠してはいけない。別紙(ページ)参照のような形であっても明示しているとは言えない。

という、至極ごもっともなものです。

匿名性確保策の色々

最初に自分のプライバシーを守る為の原則を掲げておきましょう。
あなたのオンライン・プライバシーを守る12の方法

ちなみに、Electronic Frontier Foundationは民間の団体です。
日本では個人情報保護というと、どうしても政府・お役所・それらの諮問機関や外郭団体主導のような構図になっているのが歯がゆいところです。
個人情報保護基本法制に関する大綱

プライバシーを守るためのツールの数々

EPIC Online Guide to Practical Privacy Toolsには種々のサービスやソフトが紹介されています。

匿名でブラウズする

WWWのブラウジングを匿名で行うためにはプロキシサーバのサービスを使うことが出来ます。ユーザはプロキシサーバを経由して目的のサーバをアクセスします。目的のサーバはプロキシサーバからのアクセスとしてしか把握できません。これの難点はスピードと操作性です。
idzap
Free anonymous surfingは無料ですがユーザ登録が必要です。
anonymizer.com
Private Surfingというソフト製品を売っています。
Anonymprom.com
Anonymous surfというサービスがあります。
Zero-KnowledgeのFreedom>
FreedomR WebSecureというソフトをダウンロードしてユーザのPCにインストールする必要があります。試していませんが結構本格的に使えそうな有償サービスです。
いずれも、ページが表示されるまでに要する時間はかなり長くなってしまいます。
そして、このプロキシサーバを運営している会社はユーザのアクセス履歴を詳細に把握できてしまいます。ひょっとして、これが一番のリスクかもしれません。

電子メールの暗号化・証明

PGP OpenPGPベースのGnuPGなどPGPを使いましょう。
PGPはThe International PGPから、各OSに対応したものをダウンロードできます。
GnuPGは、WindowsやMacユーザにはちょっと使いにくいかも。PGPについては、インターネット上に色々資料が公開されていますから、サーチエンジンなどで探して勉強しましょう。

逆用する

ここは、やや危ない話になりますが、インターネットの匿名性を逆手にとる方法です。

なりすます
ユーザ登録を求められたときなどは、インターネットの匿名性を活かして架空の人物になることができます。完全に架空のキャラクターをでっち上げるのは不気味な感じがします。そこまでしなくても、HTMLのフォームで入力するときは、入力必須項目であっても通常、何か1文字入力すれば入力有無チェックには引っかかりませんから、その程度でも匿名性は守られます。年齢や生年月日、性別などは受け取った側ではチェックしようがないのが普通です。
ブラックホール化したメールアドレス
無料のWebメール・アドレスは簡単に取得できます。ジャンクメール対策として、受信メールを一定の条件で捨てることができるサイトも多々あります。無条件に捨てる条件として、たとえば、@の付くメールアドレスが発信元である場合を指定するとどうなるでしょう? 当然、受信したメールはすべてゴミ箱行きになります。こういうメールアドレスを一つ用意して、メールアドレスの入力を求められた時にこのアドレスを入力すれば、後でしつこいメールに煩わされずに済みます。
自分のメールサーバがあれば、ゴミ箱直行のメールアドレスを作ることも出来ます。procmailで消すことができます。

プライバシーと匿名性についての議論

専らプライバシーの侵害という側面を強調しますが、これはこれが現実の脅威として大きいからであり逆に匿名性を悪用する事例にも事欠きません。匿名性は名誉毀損や嫌がらせにもなりますし、言論統制に対する武器にもなり得ます。法律に頼ろうとするのは少なくとも民主主義国家では言論・表現の自由との絡みで問題が発生します。ここらの議論としては以下がよくまとまっていると思います。
情報処理学会誌『情報処理』「インタラクティブ・エッセイ」 1994年4月号